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蝉のぬけがらに心惹かれる。
本体は飛び去ってしまい、薄い膜だけなのに、そこには強烈な存在感と本体の気配も残している。
私たち人間はなにを脱ぎ捨てて成長していくのだろう。
もしかしたら、小さくなったり古くなったりして新しく交換していく服が、それにあたるのではないだろうか。
そんな自分の記憶を辿る事が、制作の出発点だった。
私は記憶の中の服を油紙で再制作している。
油紙は、怪我をした皮膚に貼れば、皮膚の再生を早めるという。
作品が油紙で作られているのは、それが治癒と再生の象徴だから。
過去の服を通して思い出す記憶が今の自分を作り、今が未来の自分を作るのだろう。
過去と今の自分を見つめる作業の中で、幼いころからずっと本を読んでいた事が思い出された。
物語の世界を旅することは、私が経験することのなかった、別の人生を疑似体験する事である。
個人的な記憶によって引き出された物語が、作品の体験者それぞれに異なった、次の新しい物語を紡ぎ出すことを願っている。
私とは数え切れないたくさんの記憶の積み重ねだと考えると、過ぎ去っていく日常の全てが大切に思われるのです。
日々再生してゆける願いも込めて、作品を制作していきたい。
PORTFOLIO